厳しさの中にも、新しい可能性が見えた1年
理美容業界にとって、2025年は決して「平穏な年」とは言えませんでした。長引く物価高によって消費者の節約志向は強まり、特にパーマ需要が大幅に減少するなど、業界全体がシビアな市場の変化に直面した1年でした。
しかし、吹いたのは逆風だけではありません。AIによる新しいカウンセリング技術の登場や、国家試験手続きのオンライン化決定など、業界を長年縛っていた「古い常識」が音を立てて変わり始めた年でもありました。
苦しい環境下でも、次世代への「新しい芽」が確実に育ちつつある2025年。業界を賑わせたニュースから、この1年の大きな潮流を振り返ります。
1. 経済・現場のリアル
「値上げ」の明暗:理容は堅調、美容は苦戦
加速する消費者の「パーマ離れ」
理美容業界で働く読者の方にとって、2025年は、お客様の「お財布の紐(ひも)」の固さを肌で感じる1年だったのではないでしょうか。物価高や人件費高騰の影響などで、過去1年間に理容室の22%、美容室の31%が料金の値上げに踏み切りました。しかし、その結果は業界でくっきりと分かれました。理容室では「収益が増えた」お店が多かったのに対し、美容室では「値上げをしたのに収益が減った」お店が、増えたお店の約2倍に達してしまいました。
美容室はカラーやパーマトリートメントを含む高単価メニューが多いため、値上げに敏感なお客様が来店間隔を延ばしたりしがちです。こうした小さな節約が売上減につながります。一方、理容室はシンプルなカットが中心で来店周期が崩れにくく、値上げ後も頻度が落ちにくい点が大きな違いです。
また、現場で特に変化を感じたのは「メニュー選び」ではないでしょうか。総務省の家計調査(2025年10月)でも、パーマにかける金額が2桁レベルで大幅に減っています。「カットはするけど、パーマは我慢する」といった、お客様のシビアな節約志向が、美容室の売上に直結した1年でした。
2. 働き方・キャリア
給与アップと「ハイブリッド」な働き方の定着
厳しいニュースだけでなく、働く美容師にとっては明るい兆しもありました。業界全体で賃上げの動きが鈍る中、中には正社員の月給を最大3.5万円引き上げるなど、「人への投資」を強化する動きが見られました。これは、良い人材を確保して良いサービスを提供する「ハッピーサイクル」を作ろうとするポジティブな変化です。
また、働き方の選択肢も広がっています。正社員、フリーランス、業務委託、シェアサロンを組み合わせた「ハイブリッド型」の経営モデルが登場しました。「安定して働きたい」時と「自由に稼ぎたい」時、それぞれのライフステージに合わせて働き方を選べる環境が、2025年にはより当たり前のものになりつつあります。
3. テクノロジー・DX
AIが「似合わせ」を提案!? 国家試験もついにオンライン化へ
デジタル技術が、これまで「感覚」に頼っていた部分をサポートし始めました。お客様への提案で悩む「似合わせ」ですが、「印象AIカウンセリング」の登場により、AIがデータに基づいて最適なスタイルを可視化してくれるようになりました。カウンセリングの強い味方になりそうです。
そして、学生や若手美容師にとって最大のニュースは、国家試験や免許申請の手続きがオンライン化されることでしょう(2026年3月運用開始予定)。これまで手書きや郵送で行っていた面倒な手続きがスマホやPCで完結するようになり、業界のアナログな慣習が大きく変わろうとしています。
一方で、集客面では「TikTok運用でフォロワー1万人未達なら全額返金」という成果保証型サービスが登場するなど、SNS活用が「なんとなく」から「結果(数字)」を厳しく求められるフェーズに入ったことも見逃せません。
4. トレンド・技術
「黒染め」の常識が変わる! 次のカラーを邪魔しない新技術
薬剤やメニューでも、現場の悩みを解決する進化がありました。特筆すべきは、「黒染め」概念の刷新です。就活などで一度黒くすると、次のカラーで明るくなりにくい、という悩みは過去のものになるかもしれません。黒髪から次のカラーへ柔軟にチェンジできる新しいカラー剤が登場しました。これによりヘアカラーの自由度が大きく広がりました。
また、冬の髪悩みとして「乾燥」がトップに挙がる中、音波ミストを使った頭皮ケア機器が発表されるなど、髪そのものの素材美や頭皮環境を守るケアメニューへの注目は、2025年も変わらず高いままでした。
まとめ:変化に対応する力が求められた1年
2025年を振り返ると、ただ待っているだけではお客様や働くスタッフに来てもらえない(特にパーマなどのプラスメニューが出にくい)厳しい状況下で、「新しい武器(AIや新薬剤)」や「新しいキャリアの選択肢(働き方)」をどう取り入れるかが問われた1年でした。
これから美容師を目指す方や若手の方にとっては、古い慣習(手続きや雇用形態)がアップデートされ、より自由に、そしてよりクリエイティブに働ける土台が整い始めた年とも言えるでしょう
参考サイト: https://ribiyo-news.jp/