今回は福利厚生について3回目になります。(前回のコラムは▼▼▼)
今回のコラムでは社会保険の中でも「厚生年金」について取り上げます。社会人になり、初めて年金制度に加入する人が多いと思います。以前は「年金手帳」を受け取ったものですが、令和4年4月以降、これまでの年金手帳に代わり「基礎年金番号通知書」が発行されるようになりました。年金というと「老後の備え」というイメージかと思います。若い方にはピンと来ない制度だと思いますが、わかりやすく説明していきたいと思います。
公的年金制度の必要性
私たちの人生には、自分や家族の加齢、障害、死亡など、さまざまな要因で、自立した生活が困難になるリスクがあります。こうした生活上のリスクは、予測することができないため、個人だけで備えるには限界があります。そこで、これらに備えるための仕組みが、公的年金制度です。公的年金制度は、あらかじめ保険料を納めることで、必要なときに給付を受けることができる社会保険です。(厚生労働省HPより)
厚生年金について
厚生年金は、国民年金と並んで日本の社会保障制度の中で最も大きな公的年金制度のひとつです。前回「健康保険」の記事で「国民皆保険制度」という事を伝えましたが、日本の公的年金制度は、「国民皆年金」という特徴を持ち、国民年金(基礎年金)と、厚生年金があります。また、公的年金の給付の種類はそれぞれ老齢年金(65歳に達した方に支給)障害年金(病気やケガが原因で、障害認定を受けた方へ支給)と遺族年金(生計維持関係にある被保険者が死亡した時に支給)があります。
厚生年金と国民年金の違い
国民年金は日本に住んでいる20歳から60歳未満までの全ての人が加入する公的年金(※)であるのに対して、厚生年金は、厚生年金保険の適用を受ける事業所に勤務する70歳未満の会社員・公務員などが対象です。会社員・公務員の方は、2つの年金制度に加入するため2階建て構造といわれます。
国民年金には、職業などによって3つの被保険者の種別があり、それぞれ加入手続きや保険料の納付方法が異なります。厚生年金の場合は厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶、官公庁などの適用事業所に常時雇用される70歳未満の方は、国籍や性別などにかかわらず厚生年金保険の被保険者となります。
また以下の違いがあります。
国民年金 | 厚生年金 | |
---|---|---|
保険料 | 一律 | 収入により異なる |
保険料負担 | 加入者が全額負担 | 会社と半額ずつ負担 |
最低被保険者期間 | 10年 | 1ヶ月 |
受給開始年齢 | 65歳 | 65歳 |
将来の受給額 | 加入期間に応じて一律 | 収入と加入期間による |
※学生には、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。
厚生年金加入におけるメリット
厚生年金へ加入した場合のメリットは以下のとおりです。
1、老齢年金額が上乗せされる
老齢年金とは、65歳より支給される年金のことで国民年金の場合は「老齢基礎年金」、厚生年金の場合は「老齢厚生年金」といいます。老齢厚生年金は、老齢基礎年金に上乗せして支給されるため、国民年金のみの加入者に比べ給付額が増えます。
2、配偶者の優遇措置がある(国民年金第3号被保険者制度)
厚生年金被保険者に扶養されている配偶者の方で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方は、国民年金第3号被保険者となり、保険料負担は0円となります。(ただし、年収130万円未満であっても厚生年金保険の加入要件にあてはまる方は厚生年金保険に加入することになるため国民年金第3号被保険者にはなりません。)
3、国民年金に比べ補償の範囲が広い
老齢年金のほかに、障害年金と遺族年金がありますが、以下の通り国民年金加入者よりも手厚い保障を受けることができます。
国民年金 | 厚生年金 | |
---|---|---|
障害年金 | 障害等級1~2級の場合に支給 | 障害等級1~3級の場合に支給 (3級に達していなくても支給される場合あり) |
遺族年金 | 生計を維持されていた要件を満たした子供に支給 | 生計を維持されていた妻、要件を満たした子供、夫、父母、孫、祖父母に支給 |
以上、厚生年金について説明してきました。厚生年金に加入することで国民年金よりもメリットが多い事がおわかりいただけたと思います。
私的年金制度について
健康保険と同じく年金制度にも課題が多く、今後老齢年金受給年齢が引き上げられたり受給額が減少していくと言われています。人生100年時代となり、老後に不安を持つ若い世代も少なくありません。私的年金とは、公的年金の上乗せの給付を保障する制度です。国民年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、民間の保険会社などが販売している個人年金保険を指します。公的年金と組み合わせることで、より豊かな老後生活を送るための一助となるでしょう。
次回は最後。「労災保険」「雇用保険」「介護保険」について取り上げます。