前回のコラムではスタイリストデビューについて解説しました。
その中でスタイリストデビューの捉え方が変化し、早期デビューを提唱する美容室が増えてきた、というお話をしました。そこで、今回のコラムではスタイリストデビューが早くなった理由について詳しく解説したいと思います。以下の3つについて分析していきます。
1、働き方改革による社会の変化
2、美容業界特有の人手不足
3、美容室経営における生産性の向上
では順番に見ていきましょう。
1、働き方改革による社会の変化
働き方改革とは
美容室が誕生した昭和時代から平成、そして令和へと世の中は目まぐるしく変化しました。ここでは働き方の変化についてみてみましょう。
皆さんは「働き方改革」という言葉を聞いた事があると思います。「働き方改革」は2016年に労働環境の改善や労働生産性の向上を図り、ワーク・ライフ・バランス(※)の実現や働き手の多様な働き方の選択肢の拡充を促進するよう提唱され、2016年以降、様々な労働に関する法整備もされて来ました。
それに伴い、昭和時代、3K(キツイ、キビシイ、給料が安い)と言われていた美容業界ですが、労働環境の改善、柔軟な働き方の導入、業務効率の改善などが進みました。また、美容師になるまで3〜5年以上の長い下積みといわれるアシスタント期間がありました。その間は給料も安く長時間労働が当たり前でしたが、アシスタント期間もどんどん短くなって行き、いつしか下積みという言葉も使わなくなりました。
※政府広報オンラインでは、ワーク・ライフ・バランスとは「働くすべての方々が、『仕事』と育児や介護、趣味や学習、休養、地域活動といった『仕事以外の生活』との調和をとり、その両方を充実させる働き方・生き方」と定義されています。
下積みや過度の労働の抑制
働き方改革の目的は、労働環境の改善や労働生産性の向上を図ることで、下積みや過度な労働の抑制を含んでいます。下積み期間は、低賃金や不安定な雇用条件による経済的不安、キャリア遅延への懸念をもたらします。その背景にはインターネットやSNSの普及により生じた情報過多の影響もあるでしょう。周囲と比較して自分のキャリアを不安に思う若者世代が多いようです。また成功や成果を即座に共有できるため同世代の成功ストーリーを目にし、自分も同様の成功を短期間で達成したいというプレッシャーを感じることがあるようです。
2、美容業界特有の人手不足
美容師は国家資格を取得しないとその仕事に就けないという、美容業界特有のハードルがあります。そして人口減少の影響もあり、新卒求人数に対して新規に国家資格を取得する若者の数が圧倒的に少ないという現象が続いています。そのため人材獲得が非常に困難になり、美容室では労働環境改善に努めて人材獲得に力を入れています。初任給もあがり、社会保険完備は当たり前です。加えてアシスタント期間を短くし、スタイリストデビューまで長くても2年前後を提唱する美容室がほとんどになりました。短ければ半年、1年です。またできる技術からどんどんお客様を担当できるようにして仕事にやりがいを持てるようにしています。
※前回のコラム記事参考
https://qb-recruit.com/column/post-9122/
3、美容室経営における生産性の向上
働き方改革では、労働環境の改善とともに労働生産性の向上に触れています。労働時間が短いのに給料が良くなるには「労働生産性の向上」が必須です。労働生産性とは「従業員一人当たり、または従業員が一時間当たりに生み出す成果」です。そのため、経営者としては早く従業員が自分の力で成果(売上)を上げられるように育って欲しいと願います。
スタイリストデビューが早くなったり、できる技術からどんどんお客様に入るようになった理由の一つには、このように自分で成果を上げられる人材を早期育成する必要性がありました。またそれらは同時に「仕事のやりがい」を早くから感じる事ができ、従業員満足度を高める結果に繋がりました。そのため従業員の評価としても「技術力が高い、売上を上げられる」とは別に経験を重ねた時に「人を育てられるか」という点が非常に重要になっています。
以上、スタイリストデビューが早くなった原因について解説しました。
美容業界は世の中の変化にしっかり対応し改善を重ねて来た事で今日の繁栄があることがわかると思います。長く続くには変化が必要といいますが、その通りです。
次回はスタイリストデビューが早いことのメリット、デメリットについて解説したいと思います。