働き方 26854566_s

いつの間にか人生100年時代といわれるようになりました。医療の進歩や環境の変化などで人類の寿命は100年で54歳伸びたといわれ(※1)中でも日本は世界一の長寿国である事は良く知られています。今後、人生の中で企業や社会との関わりもこれまで以上に長く、増えていくでしょう。そこで、今回のコラムでは経済産業省が提唱している「人生100年時代の社会人基礎力」について紹介します。この内容はこれから社会人になる若者だけでなく、企業で人材育成を担当する管理者、先輩社員、経営者の皆さんにとっても非常に参考になる知識だと思います。

人生100年時代とは、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(※2)の著者であるリンダ・グラットン教授が提言しました。人生100年時代とは、「寿命が(100歳前後まで)今後伸びていくにあたって、国・組織・個人がライフコースの見直しを迫られている」という内容を表す言葉として登場します。著書では「2007年に日本で生まれた子供については、107歳まで生きる確率が50%ある」と書かれています。そして日本でも2017年9月、日本政府によって「人生100年時代構想会議」が開催されています。「子供たちの誰もが経済事情にかかわらず夢に向かって頑張ることができる社会」「いくつになっても学び直しができ、新しいことにチャレンジできる社会」。こうした社会づくりに積極的に取り組んでいます。

 

 

人生100年時代の社会人基礎力

「社会人基礎力」は2006年に提唱されていましたが、時代が変わり、その内容が不十分という事で、新たに「人生100年時代の社会人基礎力」として2018年に提唱されました。下記の図をご覧ください。

①考え抜く力(シンキング)②チームで働く力(チームワーク)③前に踏み出す力(アクション)という3つの能力(12の能力要素)の他に、「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「どう活躍するか」という3つの新たな視点が追加されました。「学校教育を受け、社会人として60歳まで働き、その後は老後を送る」といった昭和時代のロールモデルが全く当てはまらなくなった平成、令和時代。社会で長く活躍するために、学び続ける事が必要となりました。

 

目的、学び、組み合わせのバランスを計る

「人生100年時代の社会人基礎力」では「目的」「学び」「組み合わせ」それぞれ3つの視点のバランスが大切だと言っています。では、具体的に理美容業界の仕事に置き換えて考えてみましょう。

【目的】どう活躍するか。

→理美容の仕事を通じて自己実現を達成するだけでなく、社会貢献に向けて行動する。

【学び】何を学ぶか

→美容の技術、接客、人として大切な事、人生設計に必要な事などを常に学ぶ習慣をつける。

【組合わせ】どのように学ぶか

→自分自身の経験、能力だけでなく他者から学び得たものを取り入れ組み合わせていく。

 

近頃、理容師・美容師を目指す若者の話を聞くと「練習したくないけれど早くスタイリストになりたい」また「楽して稼ぎたい」と希望する若者が多いような気がします。早くスタイリストになりたければ練習が必要であり、稼ぎたければ努力が必要です。そしてどちらも「学び」は欠かせません。目的、学び、組み合わせのバランスを計るにはまず「学び続ける事」の重要性を自覚しましょう。また企業側もそのための教育を根気良く行う必要があるでしょう。

 

本人の気づきを引き出す「問い」の重要性

「人生100年時代の社会人基礎力」では本人が自分事として捉え人生を送るために「気づき」を引き出す「問い」についても言及しています。人生はまず「学校教育を受けている時代」と「社会人以降の時代」に大きく分ける事ができます。前者で何を学び、どう過ごして来たかが後者に大きく関わります。そのため幼少時代から人生100年時代の社会人基礎力を逆算して教育する必要があり、その考え方は学習指導要領にも組み込まれているようです。

では、すでに学校教育を終えた現在社会人の皆さん、中でも社会人になったばかりの皆さんにとって有効な「気づき」を引き出す「問い」を紹介しましょう。ぜひ、自分に問いかけて気づきを得てください。

【目的】どう活躍するか。

「問い」→組織や家庭との関係でどんな自分でありたいか?

【学び】何を学ぶか

「問い」→自らが付加価値を生み出すための学びはなにか?どうしたら学びの広さや深さを得られるか?

【組合わせ】どのように学ぶか

「問い」→多様な人と出会い 、視野を広く持ち、多様な機会を得ているか?

 

個人の成長と企業の成長

「人生100年時代の社会人基礎力」を個人が自分事として捉え、意識し、行動しキャリアを切りひらく一方で、企業や組織は多様な人材が活躍できる場を提供する事が必要です。個人の成長と企業の成長のベクトルを合わせることにより、はじめて生産性の向上が実現可能で企業は成長していくでしょう。

理美容業界においても多様な能力を持つ人材がこれから増えていく事でしょう。教育機関(理美容専門学校)と企業(サロン)が一体となって人材が長く活躍できる環境を作っていく必要があると思います。

 

 

(※1)EXTRA LIFE なぜ100年で寿命が54歳も延びたのかに記載/スティーブン・ジョンソン (著)
(※2)LIFE SHIFT:100年時代の人生戦略2016年発行。LIFE SHIFT2:人生100年時代の行動戦略は2021年発行。

Related Keyword

Recommended Articles

Column Category

トップへ